名人に聞け 石丸敏文名人

※2011年1月 ヒロシマスタートライン掲載

石丸敏文名人
磯釣り歴30年。子供のころから川や池でハヤや鯉、鮒を釣っていた。グレックスG1カップ優勝―グレ、第26回G杯争奪全日本がま磯(チヌ)選手権優勝、第25回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権3位、GFG杯争奪全日本地区対抗選手権 平成19年度GFG杯チヌ優勝、平成20年度同大会2位。ホームグランドは宇和島、年間釣行100回。翔竿会所属

石丸

 2010年12月、広島県呉市川尻町に浮かぶ、チヌ釣りの名島「柏島」で、数々のビッグタイトルを獲得している、がまかつフィールドテスターの石丸敏文名人に実釣を交えながら釣り上達法について、インタビューを行った。

▼まずは、今日の仕掛けについて教えて下さい。
石丸名人「今日は、ウキ00、ハリスに7を二つ打った全遊動仕掛けです。竿はインテッサGⅣ0.8号の5m30センチ、道糸は1.75号、ハリス1.5号、針はチヌ針の2号です。まあ、瀬戸内の磯でチヌを狙う、オーソドックスな仕掛けです。」

▼いざ海に向かって、まずどんなプログラムというか作戦を組み立てるんですか?
石丸名人「ここは、風が真っ向から吹いて厳しいねぇ。見た感じ水深も浅いし…。と、いう感じで今置かれている状況、目視での判断、藻が生えている、沖は潮が流れている、それに引かれる潮が出ている、という事を確認します。この時期なら魚の活性は高くない、だからガンガン流れる流心でなく、引かれ潮やヨレにいるかな?障害物などがあるからこっちかな?という具合にどの辺に魚がいるかを推測します。今日は、あの辺り(海を指さして)でヒットするかな。」
 と、藻の群生している少し沖目の引かれ潮が緩やかに流れるあたりにヒットパターンを想定。言葉通り、しばらくすると石丸名人のロッドを絞り込むアタリ。食べて美味しい32センチクラスの真鯛をゲットした。さらにしばしして、チヌらしき魚をヒット、残念ながら手前の藻の中に入り込んでしまった。

石丸名人「大きいチヌだと案外藻に入っても取れるんだけど、中小型は直ぐに弱って動かなくなっちゃいます。時間かければ取れますが、時間が勿体ないので切っちゃいますね」と無理やり外す。
石丸名人「ここも釣れそうですが、あっちの磯がよさそうですね。風もあたらなさそうだし」と、名人が見つめる先は砂浜を超えた向こう側の磯、けっこう歩くと距離ある感じ。
石丸名人「よしっ、行ってみよう」
と、さっさと荷物をまとめて、あっという間に移動してしまう。石丸名人の釣りはいつもアグレッシブなのだ。思い立ったらすぐに釣り座や位置を変える。判断力、決断力、行動力とにかくスピーディーだ。

その根底にあるものは「釣りは魚が釣れないと楽しくない」という事だと言う。当たり前のことなのだが、我々凡人ではなかなか「行動」にまで出ないのだ。「釣れないなぁ」と呟き、その場で一日を過ごしてしまう事も多い。

 移動した磯は、名人の言う通り全くの風裏で心地よく釣りが出来る。しばし、そこでチヌを狙っていたが、潮が変わった。
石丸名人「あらら、この流れ方はよくないなぁ。うーん・・・よし戻ろうか。」
またたく間に元の磯に戻る。

▼なぜ、この流れはよくないと判断されたのですか?潮流が速かったからですか?

石丸名人「いやいや、潮が速くてもチヌは釣れるんですが、ヨレやタマリも無く、また流れ方に変化が無い流れで、魚にとって居心地が悪るそうだなぁ、と判断しました。魚の気持ちになるとそう思いませんか?」

 最初の磯に舞い戻ってみると、ずいぶん潮も満ちて、風も少し収まって釣りやすくなっていた。朝に攻めていた場所から少し砂浜よりにポイントを設定して、しばらくすると作戦通りにチヌをヒットさせた。やり取りしながら石丸名人「こりゃあ、またあそこの藻に入るなぁ・・・でも残り時間も少ないんで、今度は獲りましょうね」と、藻に入ったチヌを巧みに操り、時間を掛けながらも上手く誘導してタモに収めた。
石丸2

「羽納君はいつも苦労させる(場所を選ぶ)なぁ」と苦笑いの石丸名人。とは言えとても楽しそう。

 石丸名人は、いつも楽しそうに釣りをする。爆釣している時も、宇和島などでまるっきり何のアタリもない時も、トーナメントで真剣に戦っている時も、とにかく楽しそうに見える。「石丸さんにとって釣りとはなんですか?」と問いかけた。
石丸名人「釣りとは・・・。そりゃあ『趣味』です。まるっきりの趣味。決して仕事じゃないよ。」と、あっさりと割り切っている。

 だからこそ、メーカーテスターという立場になっても自分を追い詰めることなく楽しめるのだろう。釣り人にとって、最もシンプルな思考「釣りたい」「魚釣りが好き」という本能的な欲求に、どんな時も突き動かされているように思えた。

▼チヌでは全国制覇も60オーバーも獲りました。次の目標は何ですか?
石丸名人「チヌは日本記録(拓寸70㎝)です。石鯛の60㎝も釣りたいし、グレのトーナメント(がまかつ主催G杯グレ)でも全国優勝したいし、やることはまだまだ沢山あるんよ」と嬉しそうに語ってくれた。目標がある人生は充実するのだと教えられました。